ロレックス事件簿~個人売買にはご用心~

事件発生!

普段何気なくネットでニュースを見ている時に、なじみの単語が出てくるとハッと目が行ってしまいますよね。

少し前のニュースになりますが、私も「ロレックス」という単語にハッとしてしまったのが以下のニュースです。

ロレックスの腕時計の購入代金として偽の1万円札62枚を使ったとして、警視庁は、東京都調布市布田1丁目、大学生斎藤薫実(たくみ)容疑者(22)を偽造通貨行使の疑いで逮捕し、10日発表した。斎藤容疑者は容疑を否認しているという。

引用元:朝日新聞デジタル


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捜査2課によると、斎藤容疑者は2月上旬、東京都港区の図書館で、同区内の50代男性から腕時計を購入する際、封筒に入れた偽1万円札62枚を手渡した疑いがある。インターネットの掲示板に出品していた男性に購入を申し込んでいた。男性が帰宅後に改めて確認し、印刷や切断面のずれに気づいたという。偽札はすべて同じ記番号で、カラーコピーされたものとみられるという。

 同じ日には東京都新宿区内で同じ記番号の偽1万円札35枚が封筒に入った状態で見つかっており、警視庁が関連を調べている。

引用元:朝日新聞デジタル

 

 事件に対するコメントに違和感が・・・

「え~!カラーコピーなんてすぐばれるだろ!!」

と誰もが思ったことでしょう。

そしてそんなことを実行してしまう大学生って・・・

犯行自体の拙さには疑いの余地もなく、そのためこんなニュースになってしまっているのだろうとも思います。

 

私はこのニュースを某ヤ〇ーニュースの記事で読んだのですが

事件の内容よりも気になってしまったのはコメント欄の内容です。

基本的にはデフォルトで「共感順」に並んでいたはずですので、

より賛同者が多い順にコメントを目にしていたはずなのですが、

私にとっては違和感を感じるコメントが・・・

 

※現在、ヤ〇ーニュースのページは閲覧できない状態となっておりコメント欄自体も閲覧できないため、以下にご紹介するコメント内容は私の記憶によるものということ、また極めて私的な意見であることをご了承ください。

 

ロレックスに対する世間の目とは

まず気になったのは

「そこまでしてロレックスって欲しい?ロレックスは自分で稼いだお金で買うから価値があるんだよ」

というコメント(要旨)です。

 

犯人は本当にロレックスが欲しかったのか、

それとも現金化しやすい物としてロレックスを選んだのかはわかりませんが、

私には後者であるとしか思えません。

 

罪を犯してまで手に入れたいという欲望を持っているのに、個人売買で手に入れた中古品で満足できるでしょうか。

また偽札を使用するのですから使う枚数は何枚でもそれほど変わりは無いと思います。

であれば新品だって買うことができるわけです。

新品のロレックスを買わない、つまり店舗で使用しなかった理由としてはやはり店舗で偽札を使用するとすぐばれる可能性が高いと考えたからなのではないでしょうか。

犯人はインターネット経由で直接現金をやり取りする個人売買を利用しているわけですが、ロレックスとはいってもそれほど出品数も多くはないでしょうし、その中で都合よく欲しいモデルが出品されている可能性も低いでしょう。

 

逆に個人売買を利用して、偽札であることがばれるリスクを低くして現金化できる商品を購入しようと考えたという方が極めて自然な気がします。(結局ばれてますけどね)

 

ただ私は、コメントされた方の意見が間違っているのでは、ということを言いたいのではありません。

この事件の記事を目にした方が

このようなコメントをしてしまうこと自体、

さらに多くの方が共感していることに違和感を感じるのです。

 

なぜこのようなコメントに至ったかを考えてみると、

コメントをされた方、共感している方は「ロレックス」に対して「高価」「お金持ち」「見栄」「ステータス」「成金趣味」といったイメージを強く持っているということが挙げられるのではないでしょうか。

そのため「ロレックス」というワードから短絡的に「ロレックス目当ての犯行か」という思考に至ったということが考えられます。

また犯人が「貧乏」「お金を持っていない」というイメージが少なからずある「大学生」であるという点も多少は関係しているかもしれませんね。

 

また「ロレックスは自分で稼いだお金で買うから価値がある」という内容からは、

購入するまでの過程に意味があるという考えが根底にあると思われます。

ロレックスを買えるくらいの収入を貰えるようになった・・・

がんばって貯金してお金を貯めた・・・

確かにそういう側面もあるでしょう。

 

しかし改めて考えてみると、

自分の欲しいもので高額なものを買う時って自分で稼いだお金以外で買います??

ロレックスに限らずある意味当たり前の内容ですよね??

そこでわざわざ「ロレックスは」としてコメントしてしまう、というのは

完全にロレックスを「高級品・贅沢品の象徴」として扱っているからではないでしょうか。

 

以上を踏まえると上記のコメントには

ロレックスに対する強すぎるイメージ・先入観

が強く作用した結果、生じたコメントであると言えるのではないでしょうか。

 

ロレックスは「腕時計」なのか

-はい、腕時計です-

 

次に気になったコメントは

「私はホームセンターで購入した3000円の腕時計をしていますがこれで十分です。高いお金を出してロレックスを買う人の気持ちがわかりません。」

といったものです。

 

腕時計に限らず、こういった意見をアピールする謎の勢力が一定数います。

基本的にはこういった意見については

「自分でお金出して欲しいものを買ってるんだから、ほっといてくれ!」

と一蹴したくなりますが

コメント自体は個人の意見として捉えるならば理解はできます。

なぜならコメントをされた方はロレックスについて「ただの腕時計」としての価値しか見出していないからです。

 

一般的に考えてロレックスを購入したいと考える人はもともと腕時計をつける習慣のある方でしょうし、購入を検討した時点で他に腕時計を所持している方もいるでしょう。

またロレックスを所持してる方でも他の腕時計と合わせて、時・場所・場合によって使い分けている方もいらっしゃるかと思います。

もしかしたらホームセンターの3000円の腕時計も所持しているかもしれません。

とすると、

ロレックスを購入したいと考える人というのは腕時計としての機能に魅力を感じて

買いたいと考えているわけではないですよね。 

もう腕時計は持っているのですから。

ロレックスに「ただの腕時計」という以外の価値を見出しているからこそ購入する、あるいは購入したいと考えるわけです。

  

そういう意味では

ロレックスは腕時計ですが腕時計じゃないんです!

 

ちなみにこのコメントをされた方は3000円の時計で十分とおっしゃっていますが、「100円均一の腕時計で十分」「腕時計無くてもスマホで十分」なんて意見を耳にすることもあります。

もし100円均一の腕時計をした方に「3000円でも高いよ、100均ので十分」なんて言われたら何と答えるのでしょう。

防水性、耐久性、デザイン、精度・・・

理由はいろいろ考えられ得ると思います。

一つ言えることは3000円の時計を購入している時点で、単純に価格で時計を選んでいるのではなく、

「時間を知る」という腕時計の機能以外の、その方自身の腕時計に対して望むスペック(=価値・好み)が満たされているかどうかを判断した上で時計を選んでいるということです。

これって程度は違ってもロレックスの場合と同じことですよね?

 

そういう視点からすると、こちらのコメントは

「私はロレックスではなく、3000円の時計を好んで使っています」

 と自身の時計の好み・価値観を表明しているに過ぎません。

そんなこと言われても

「はあ、そうなんですか、好みは人それぞれだからね・・・」

以上の反応はできません。

 

ちなみに百貨店のフロアマップなどで「時計・宝飾品」というまとめ方をされているのを目にされたことがあるかと思います。

これは商品である時計の「腕時計としての機能」以外の価値が考慮された結果であることは明らかですよね。

 

ロレックスだからってなんなのさ!

以上、ご紹介した共感した人の多い2件のコメントに共通する点・・・

それはいかに「ロレックス」という言葉に釣られている人が多いかということです。

 

実際、ロレックスが高価であることは確かですが、機械式時計の中で飛びぬけて高価なわけではありません。

にもかかわらず、こういったコメントをされる方がいる、そのコメントに多くの方が共感されているということは

ロレックスに対する「高価」「お金持ち」などといった強すぎるイメージから生じているある種の誤解によるところが大きいのではないでしょうか。

逆に言うとロレックスのブランド力の強さの裏返しとも言えそうです。

 

またこういったコメントをされる背景には

「腕時計」という一般に身近なアイテムであることも関係がありそうです。

 

フェラーリが高速で大破しても「そもそもフェラーリって欲しい?」とはなかなか言わないでしょう。

空き巣が侵入して貴金属を盗んでも「宝石って所詮ただの石でしょ?」とは言わないでしょう。

ある社長が有名アーティストの絵画を購入しても「絵を買う人の気持ちがわからない」とは言わないでしょう。

これらはそれぞれ自動車(スポーツカー)の価値、アクセサリーの価値、美術品の価値という単一のベクトル上にあるハイスペックなものという位置づけになるかと思います。

良いスポーツカー=フェラーリ

良いアクセサリー=宝石

良い美術品=有名アーティストの作品

そして基本的には「良い」=「高級」という考えが多数の方の中で成り立ちます。

これらは高額であっても「好きな人は好きだから購入する人もいるよね」と納得でき、

さらに興味のない人はそのモノ自体に対して

迷うことなく”買わない”という選択肢を取ることができます

「スポーツカー?趣味じゃないので買わないよ。家族が乗れる車がいいんだよ。」

(自動車に関しては好み・趣向によってきっちりラインナップの住み分けができているとも言えそうです。)

 

それではロレックスの場合はどうでしょうか。

ロレックスは「腕時計」です。

腕時計は比較的生活に密着したアイテムで実用性の高いものであり、

趣味で腕時計をつける/つけない自体を選択しているケースは比較的少ないでしょう。

そのため腕時計を所持している方は多いと思いますが、

「良い腕時計はどういうものか」と考えると・・・?

腕時計に対して望むスペックは多様であるため良い腕時計=ロレックスとはならない方は多いのではないでしょうか。

また生活に必要なものという視点ではコストパフォーマンスの良いものが好まれるのも当然でしょう。

そうすると「良い」=「高級」は成立しにくいわけです。

一方で「高級な腕時計は?」と尋ねると

ブランドに対する強いイメージが故に「ロレックス」を挙げる人は多いでのではないでしょうか。

つまり腕時計の価値と価格に対するギャップが存在していることになります。

そうした方々にとっては、

 

ロレックスは比較的身近にある

「高価だけど価値のわからないもの」

の一つとなっているのでしょう。

 

報道の在り方にも疑問が・・・

このニュースって偽札を使って捕まったって事件ですよね。

ロレックス、事件に大してかんけぇねぇ~

 

そもそも「ロレックス」って情報必要ですかね?

引用の記事でも「ロレックスの腕時計の購入代金として」とありますが

「腕時計の購入代金として」でも

「インターネット経由で売買契約した商品の購入代金として」でも

事件の内容は問題無く伝えられるはずです。

 

「ロレックス」というワードを使用したとしても、

中古でも高値で取引されるという背景を踏まえての「ロレックスの腕時計」ということならば理解はできますが、そういった補足の記載もありません。

 

この事件で私たちが一番に学ばなければならないのは、

-直接お金をやり取りをする個人売買では偽札を使用されるということがあり得る

ー自分たちが被害者にならないために、こういった取引はなるべく避けるなど自衛の手段を考える

などといったことなのではないでしょうか。

しかし結果として実際コメント欄を見ると

事件とは直接関係のないロレックスに関するコメントが多数・・・

 

私自身も「ロレックス」というワードに目を引かれた一人ですが、

ただの話題性での「ロレックスの腕時計」という記載だとしたら、

ロレックスに対するイメージを無意味に際立たせているだけであり、

本当に社会に有益なニュースの記事とは言えないのではないでしょうか。

 

せめてこの記事くらいでは啓発しておきましょう。

直接お金をやり取りする個人売買では慎重に取引を!