ロレックスは「顧客を選んでいる」のか

西武池袋店といえば…

先日訪れた西武池袋店ですが、昨年あたりにとある事実が発覚し話題になっていたようです。

ごく簡単に言うと店員が転売目的と知りながら、外商顧客へ人気モデルを優先的に割り当てていたということです。

自分の買おうとしているブランドを貶めるような内容は避けたい気持ちがあるので詳細は記載しませんが、気になる方は調べてみてください。

この件では店員が転売目的と知りながら販売をしていた(転売行為に加担していた)という点が一番の問題となっているのですが、本当に時計が欲しくてお店に足を運んでいる人間の立場からすると、やはり顧客を選んだ優先的な販売がされていたということ自体が既に問題でしょう。

そして外商顧客分を除いたものが店頭に並ぶことになるとは思いますが、実際どの程度の本数なのか・・・

せっかく入荷があっても店頭に並ぶことも無いという状況であるならばお店に通うこと自体が無意味となってしまいますね。

さらに、いろいろな方の正規店での購入体験談等を見てみると店頭にはない店の奥にある在庫を持ってきてくれて購入できたというパターンが多いことから、来店するお客さんについても転売防止を目的として売る人を選んでいるという話もあります。

お得意様である外商顧客を優先すること自体は理解できますが、本当に来店する客に対しても人を見て選んで売っているということがあるのでしょうか。

 

転売を生み出すロレックスの価値

ロレックスには資産価値がありプレミア価格となっているモデルが多く存在します。現行のプロフェッショナルモデルと呼ばれるモデル(特にステンレス)のほとんどが該当しているといってもよいでしょう。それらは一度正規店を離れて転売されると新品同様、未使用品といった肩書きと共にプレミア価格で取引されてしまうのです。

つまりロレックスには

  • デザイン・機能などの時計としての価値
  • 資産としての価値

 の2つの価値が備わっているのです。

 

もちろん初めからお金儲けを目的として正規店を訪れる方もいるでしょう。しかし正規店へ訪れてもモデルの種類に関係なく品物があるかどうかという現在の状態が潜在的な転売を生み出しているとも言えるのではないでしょうか。

正規店への訪問は行ってみなければどのモデルが置いてあるかわからない、例えるならば携帯ゲームのガチャを回す感覚に近いような気がします。

もし仮にミルガウスを求めてお店を訪れた場合に「申し訳ありません。ミルガウスは在庫が無いのですが、GMTならございます。」なんて言われたらどうでしょう・・・買っちゃいますよね(?)

GMTにも魅力を感じているのはもちろんですが、こんな機会はめったにない、最悪売っても損はない、と考えてしまうのは当然のことではないでしょうか。

この場合、デザイン・機能などの時計としての価値を求めて来店したはずが、資産としての価値を見出して当初の目的のミルガウスではなくGMTを購入してしまっているのです。

 

なぜ顧客を選ぶのか

そこでロレックスはどう考えるか。

正直、転売目的かどうかはどちらでもいいのかもしれません(!?)

ただしブランドイメージを傷つけないことを考えると「欲しい人に適正な価格=定価で行き渡るようになってもらいたい」という姿勢を見せる必要があるでしょうし、各店舗の店員さんたちも実際そう考えて接している方がいるのではないかと思います。

最近では転売防止のために購入時に保護シールを剥がすという対策をとるという話もあります。並行輸入品として流通する保護シール付きの新品の価値を下げるためと考えられますが転売防止にはならないのではないでしょうか。保護シール無しの「新品」が同じようなプレミア価格で出回るだけのような気がします。

 

 顧客を選ぶ?選べていない!

さて上述の西武池袋店の話に戻りますと、このケースに至っては優先して販売する外商顧客自身が転売を行っていた(斡旋していた?)という状況ですし、先ほどのGMTの例を考えても転売を防止できているとは到底思えません。

また転売目的の方も必死に正規店通いをして入手している方もいるわけです。よく正規店へ足を運んでいるということも判断材料にはなりません。

転売目的ではない顧客を選ぶということは非常に困難なのではないでしょうか。

 

その中で「顧客を選ぶ」ということはおそらく実際に接してみて「信頼できる人に売る」ということになるかと思います。つまり「一見さんには売りにくい」ということになります。果たしてこれがメーカーのためになることかというと疑問です。既存の顧客を優先した場合、新たな顧客を育てることができないからです。ですからロレックスとしても長い目で見た場合、「顧客を選ぶ」状況は望ましいこととは言えないのではないでしょうか。

 

そもそも「顧客を選んでいる」というのはネット上の購入者の体験談や口コミなどの情報によるところが主ですが、なかなか簡単には手に入らないという状況の中ですから、これらの情報は当人も何度もお店に通った上でのものであると考えられます。購入した際に「何度も足を運んだいていたのでお客様に購入してもらえてよかったです」というような声を掛けてもらえるというのは想像に難くないですし、在庫が無いと言われた際にも本当に無いのか、転売を警戒されて敬遠されたのかなんて判断をするのは難しいですよね。

 

お店の奥の在庫を購入できたという話も顧客を選んでいるというよりは、そのモデルを欲しい人のために売るための対策であるような気がします。

もし人気モデルを店頭に並べていた場合、先ほどのGMTのような例を誘発しやすいでしょう。問合せをする人にだけ在庫の有無を教えることで最低限の対策としているのかもしれません。

 

買いたいものも買えないこんな世の中じゃ

それでは今後、現在のような品薄の状況は変わるのでしょうか。

本当に欲しくて通う方はお目当てのモデルが購入できた時点で目的を達成するわけですが、転売目的の方は購入できたとしてもその成功体験から再び通い始めることが多いでしょう。(さすがに同じ店には通わないでしょうが。)

こうした点からも転売目的の方、ひいては資産としての価値によって購入を決める方の割合は減ることも無く、むしろ品薄による人気の高まりに伴って増えていくことでしょう。

こうした状況を支えているのは過剰な需要が原因となっていることは明らかですが、どのモデルもプレミア化させてしまうロレックスという強大なブランド力もその要因でしょう。よって製造本数を増やす、といった希少価値を下げるというようなブランド力に影響する対応も現実的にはあり得ないと思います。

まして2019年の新作発表が先日ありましたが、それらの新作が5月、6月あたりに発売されると考えるとその間は関心度が高まることはあっても低くなることは考えにくいですね。

正規店で買いたいと思うのであればわずかな期待を持って店に通いつつ、ブームが収まるのを待つしかないのかもしれませんね・・・。